<むくみ(浮腫)とは>
細胞と細胞の間の水「組織間液」が増加した状態を言います。
人の体の約60%が水分です。そのうちの3分の2は細胞内に存在し(細胞内液)、残りの3分の1は細胞の外に存在します(細胞外液)。
また細胞外液の内、4分の1は血管内を流れ(血漿)、残りの4分の3は細胞と細胞の間に存在します(組織間液)。
血管内の血漿と組織間液のバランスは、血圧と血漿の膠質浸透圧(タンパク質:主にアルブミンの濃度)によって調整されています。タンパク質の濃度が高いほど、水をひく力が強くなります。毛細血管壁では、タンパク質が通りにくくなっているため、血管内と組織間ではタンパク質の濃度に差があります(血管>組織間)。この差によって静脈では組織間から血管内へ水が戻る仕組みになっています。(動脈側では血圧が膠質浸透圧の差を上回るため、組織間へ水分が滲みだす仕組み)。また動脈側から滲みだした水分の一部(10%程度)と、少量のタンパク質はリンパ管に流入して、体循環へ戻ります。
これらのバランスが崩れ、静脈側への組織間液の戻りが悪くなると、むくみが生じます。
<むくみの原因(血圧・膠質浸透圧の観点から)>
①毛細血管内圧の上昇
・心臓のポンプとしての機能が低下すると、心臓のほうへ血液をくみ上げる力が落ちて静脈圧が上昇、静脈側への水の戻りが悪くなり、ちょうど水が溢れた状態になりむくみが出てくる。(うっ血性心不全)。また、腎機能が極端に低下した時(尿量の減少を伴う)も、心臓の能力を上回るほどに体液が貯留すると、同様な心不全状態になる。(特徴:労作時の息切れ、上半身を起こした状態でないと呼吸が苦しいなど)
・局所の静脈の閉塞(静脈血栓・静脈瘤など)
②血漿膠質浸透圧の低下
・腎臓から大量のタンパク質ーアルブミンが尿に漏れ出てしまうネフローゼ症候群や、肝臓でのアルブミンを合成する力が低下する肝硬変症(門脈圧亢進により腹水も生じる)などでみられる。
・栄養失調による血漿タンパクの低下
③リンパの流れの障害
・動脈側では、少量のタンパク質が組織間に漏れ出るが、これは静脈側に戻れず、リンパ管に入り、体循環に戻る。リンパの流れが滞ると、このタンパク質が組織にとどまって、粘調な組織間液が貯留。(特徴:指で押しても圧痕が残らず、さらに長時間経過すると、皮膚が象のように硬くなる「象皮症」)リンパ管の切除や炎症、腫瘍の浸潤、寄生虫感染、血栓性静脈炎などが原因となる。
<その他の原因>
局所
・血管神経性・・・脳梗塞などで、血管を支配する神経が障害されると起こる
・炎症性・・・アレルギーや火傷、感染症などで生じる
全身
・内分泌性・・・甲状腺機能低下症(「粘液水腫」という硬い浮腫、寒がりになる、体重が増えるなどの特徴がある)、その他下垂体や副腎などの異常
・薬剤性・・・風邪薬や漢方薬、ホルモン剤などを服薬した際に起こる浮腫。服薬をやめると戻るのが特徴
・月経前・・・PMSに伴って生じる
・特発性・・・検査をしても異常をみとめないもの
<疾患以外:生理的なむくみの原因>
・長時間の同一姿勢(立ち仕事・座りっぱなしなど)
・運動不足、筋肉量の減少
・塩分の摂りすぎ(組織間液のナトリウム濃度が高くなると、水分をため込む働きがつよくなる)
・アルコールの摂りすぎ
・睡眠不足
・タンパク質の摂取不足
<むくみの一般的な治療>
・塩分制限
・利尿薬(体内の水分・ナトリウムの排泄を促します)
・原因疾患の治療・コントロール
<生理的なむくみの対策>
・適度な運動(筋肉のポンプ作用で、静脈の還流が良くなります)
・塩分を取りすぎない(男性:1日8g未満、女性:1日7g未満*「日本人の食事摂取基準(2015年版)」、高血圧の方は6g未満が望ましい)
・塩分(ナトリウム)の排泄を促す、カリウムの多い食品(ウリ科の野菜、パセリ、アボカド、納豆、ヨモギ、昆布、ヒジキなど)
・タンパク質の摂取が不足しないようにこころがける
むくみの対策を心がけることは、全身の健康にもつながると考えられますので、ぜひ心がけてみてください。